日本とドイツにおける近年の社会変化

日独シンポジウム

5月 8 火曜

日付/時間

2012年5月8日, 10.00-18.15

場所

国際交流基金

種類

シンポジウム

コンラート・アデナウアー財団、国際交流基金、早稲田大学日欧研究機構、新潟県立大学の四者は、共同で日独シンポジウム「日本とドイツにおける近年の社会変化」を開催しました。

他の言語 Deutsch, English

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現在、ドイツと日本両国の社会そして政治は、過渡期にあるように思われます。ドイツでは、抗議行動や市民運動が政治決断を難しくさせている中、新しいコミュニケーション・ツール、特にソーシャル・ネットワークが、社会を動かす新しい手法として使われています。ソーシャル・ネットワークは、選挙結果に影響し、また新政党設立にも一役買いました。また、ドイツでは、日本の福島原発事故を受けて、脱原発とエネルギー転換が実現しました。実際に、3月11日の東日本大震災、津波の被害、そして、原発事故を経験した日本では、その後、どのような社会的、政治的変化があったのでしょうか?ドイツと比較して、日本市民社会は、近年どのような変化を遂げているでしょうか?日本の政治システムは、それにどのように対応していっているのでしょうか?

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このような背景から、コンラート・アデナウアー財団日本事務所は、国際交流基金、新潟県立大学、早稲田大学日欧研究機構と共同で、2012年5月8日に、日独シンポジウム「日本とドイツにおける近年の社会変化」を開催しました。当日は、日独の社会学者、人文学者、政治学者、NGO代表者、国会議員の方々が報告者およびパネリストとして参加しました。

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シンポジウムは、田口栄治氏(国際交流基金)、ヨルク・ヴォルフ(KAS)、岡沢憲芙(早稲田大学 日欧研究機構)による開会の挨拶で幕を開けました。 当シンポジウムは、約100名の方が参加しました。

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セッション1では、始めに、KAS政治コンサルティング部部長のミヒャエル・ボーヒャード氏が、「現代社会のメンタリティー:今、社会で何が起きているのか?」について発表しました。

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ボーヒャード氏は、現代ドイツ社会の状況について分析し、新しいコミュニケーションツールによる画期的な社会変化、価値観の極端な変化、また社会革命といったものは、ドイツでは確認されていないと述べました。

ボーヒャード氏:2012年、今日ドイツ人の自己中心的な個人主義は衰退しているが、政治には自分たちの要求を汲み取ってほしいと思っている。ドイツ人には、自己責任意識が強いが、借金を抱えた国家の穴埋め役にはなりたくないと思っていて、自分が政治に関与できる適度な仕組みを求めている。2012年、ドイツ人は、自国に自信をもっており、愛国心もある。その事実は、歴史的重荷から軽くなり、それが決定的ではなくなった証拠でもある。ドイツ人には、人口動態の変化がもたらす課題に対する危機感はある。しかし、政治がこれらの課題に取り組むことを諦めたと悲観するのではなく、建設的な変化を創造する機会であると受け止めなければならない。ドイツ人は、グローバル化を恐れてはいない。むしろ、チャンスだと見ている。しかしながら、国際競争が激化する中で、教育機会の平等といった教育問題への関心が個人の中で大きくなっている。ドイツ人は、福島原発事故後、脱原発を果たしたにも関わらず、科学技術発達恐怖症でも、技術進歩に敵意をもっているわけでもない。基礎研究は、もっと進められなければならない。ドイツ人は、インターネットに慣れ親しんでおり、一般的に肯定的に捉えている。しかし、インターネットによって政治と関わる手法を使いこなしているわけではない。したがって、政治は、インターネットを越えて、人々に呼びかけなければならない。ドイツ人は、変わっていくし、進歩もしていくだろう。しかし、ドイツ人は、自身に忠実のままでいるだろう。「社会2.0」という新しいメンタリティーへのドラマチックな移行はない。

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続いて、東北大学の長谷川公一教授が、「震災・原発震災リスク下の市民社会:連帯/孤独と信頼/不信の両義性」について発表しました。長谷川教授は、自身も被災したことから、特に東北被災者の視点を発表しました。結論で、教授は、大震災と特に福島の原発事故によって引き起こされた社会的、政治的対立について言及しました。震災前は、多くの日本人は、政府と東京電力が推進する日本の原子力技術が安全であると信じ、原子力発電の問題には関与してきませんでした。しかし、原発リスクを受け、政府、電力会社、メディア、原子力の専門家への不信といった新しい傾向が人々の間に広がっています。長谷川教授は、震災による荒廃、2回目の敗戦のような喪失感は、日本の新しいエネルギー政策を策定する機会であり、脱原発と持続可能な未来への出発点になるであろうと述べました。

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2つの発表に続き、明治大学の大澤真幸教授の司会によるパネルディスカッションが行われました。早稲田大学の藁谷友紀教授とベストセラーにもなった「絶望の国の幸福な若者たち」の著者で東京大学に在籍する古市憲寿氏がパネリストとして参加しました。

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セッション2では、デュイスブルグ-エッセン大学のカール=ルドルフ・コルテ教授が、「反対運動に見る国政への挑戦―シュトゥットガルト21とドイツ海賊党の事例から―」について発表しました。コルテ教授は、ドイツの有権者は、新しい不確実性に直面していると結論付けました。この不確実性は、部分的は、専門知識が軽んじられていること、また方向性を見失っていることに由来すると述べました。この傾向は、最近の選挙結果や、シュトゥットガルト21のように主に中産階級に支えられている抗議行動、従来の政治プロセスに深刻な課題を突き付けている海賊党への支持が上がっていることに見られます。海賊党は、プログラムを重視する既成政党と異なりプロセスを重視する政党で、様々な政策分野への適応が可能です。特にインターネットに慣れ親しんだ有権者層からの支持を獲得しやすいと思われます。コルテ教授は、ドイツの政党が、依然として政治的意思を形成するのに最も適した組織形態で、新しい社会環境にも適応していくだとうという見方を示しました。

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続いて、早稲田大学の原田泰教授が日本の事例について述べました。原田教授は、日本のエネルギー転換と大阪の橋本市長を中心とした新しい政治運動について述べました。また、日本の高齢化社会の問題について、日本社会の家族、子供たちの状況に対する考察を交えながら発表されました。

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早稲田大学の中村英俊教授司会によるディスカッションでは、自民党の猪口邦子議員とヒューマン・ライト・ウォッチの土井香苗氏が、パネリストとして日本の政党システム及び日本における将来のエネルギー供給について自身の見解を述べました。

第3セッションでは、ボン大学のゲアード・ラングート教授と新潟県立大学の猪口孝教授が日独政府によるそれぞれの社会変化への対応についてお話されました。

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ラングート教授は、以下の6つの点をお話されました。

  1. 絶え間ない変化は、ドイツ政治の基本的要素である。議会による変化への推進は、連邦共和国当初から続くドイツ内政における特徴である。
  2. 人々と政治との距離が広がっている。ドイツは、以前、抗議行動を経験した。60年代後半の学生運動、70年代の左翼過激派による運動、80年代の軍隊の増強と原発に対する抗議運動である。それらと比べて、シュトゥットガルト市の中央駅北地区新都心形成事業(シュトゥットガルト21)に対する抗議行動は、比較的平和的で、穏やかである。国と社会、市民と政治の関係は、本質的に変わった。以前は、国家と政党は、大半の市民が抗議行動に懐疑的であると思っていればよかった。
  3. 議会制民主主義への疑心が、人々の間に広がっている。市民投票への支持は、増すばかりで、それに反対していたCDU/CSU政治家の間にも支持は、広がっている。
  4. 我々は、政党の能力を過度に期待してはいけない。政党による関与のメカニズムには、透明性が必要である。政党、議会グループに対するそれぞれの議会議員の姿勢をもっと強化されなければならない。政党は、党内の対話文化の活性化によって、より魅力的にならなければならない。
  5. ツイッターのような新しいメディアは、特に若い世代の動員を助ける新しいツールである。
  6. グローバリゼーションの時代に、長期計画を立てることは、もはや現実的ではなくなっている。次の選挙が、行く先を決定していくのである。

ラングート教授は、ドイツ政治の側からは、今日の社会変化に対するまとまった答えはないと結論づけた。

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猪口教授は、自身の発表の中で、日本の総理大臣の政治的姿勢の変化に触れた。そして、社会のよりよい発展のために、政治指導者の重要性とよりよい政党システムが重要であり、それらは政治アクターの初期のゴールであったと述べた。

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当セッションのパネルディスカッションでは、政治科学の専門家である政策研究大学院大学の飯尾潤教授、ドイツの専門家である獨協大学の上田浩二教授、民主党衆議院議員の津村啓介がパネラーとして参加しました。

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当シンポジウムは、新潟県立大学学長の猪口孝教授の総括で幕を閉じました。

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