近年、右派ポピュリズム勢力は、開発協力そのものを問題視し、激しく批判している。とりわけ「ペルーの自転車道」事業のような象徴的事例は、これらの批判をいっそう容易にしている。すなわち、「中国が道路や発電所、鉄道を建設する一方で、ドイツは自転車道を建設している」という対比である。こうした印象は、ドイツの開発協力が相手国(被援助国)の実際のニーズよりも、価値志向的・理念的な自己満足に近いのではないかとの疑念を招きかねない。ドイツ国民の税金をこのような支出に充てることで、一体何が達成されるというのか?もっとも、こうした批判の多くは表面的なものである。しかし、連邦予算の裁量余地が縮小するなかで、ドイツの開発協力の効率性および有効性を問い直すこと自体は正当な道である。他方で、この種の議論はしばしば、開発協力が有する戦略的・地政学的潜在力を見落としている。急速に変化している地政学的現実を鑑みれば、ドイツの開発協力の戦略的再調整は不可避である。とりわけ、より明確に国益を意識した開発協力への転換や、対外経済振興政策を含む包括的戦略への統合を求める声は、政策論争のなかで繰り返し提起されている。現状、ドイツの対アフリカ政策においては、時代遅れの「援助ロジック」が支配的なのである。そして、ドイツが今後の関与についてあれこれと模索している間に、他のアクターは収益の高い機会を取り込み、影響力を拡大している。
主要アクターに関する短評
中国
ここ数年、中国ほど国際協力で注目を集めている国はほとんどない。特に「一帯一路」構想(Belt and Road Initiative (BRI))の初期段階における大規模投資は迅速かつ簡便なインフラ整備への期待を抱かせた。一方で、西側諸国は早い段階から、被援助国側の背負いきれない債務の発生リスクに対して警鐘を鳴らしてきた。その後、例えばスリランカにおける象徴的プロジェクトにおいて債務問題が顕在化すると、中国はイメージ悪化の抑制に努める対応を行った。近年では、より小規模で財政的持続可能性を重視した案件へと重点を移している。同時に、中国経済(企業体)がこれらプロジェクトに深く関与している状態は、称賛と批判の両方を招いている。インフラ整備に加え、戦略的資源の確保においても、中国は自国企業を積極的に関与させ、市場における影響力を体系的に拡大している。
また、中国は国際舞台での行動を、イメージ戦略および強力なプロパガンダ的ナラティブと結びつけて展開している。これらのメッセージは、とりわけいわゆる「グローバル・サウス」において一定の共鳴を得ている。さらに、アフリカからの輸入品に対する関税免除の発表は、中国をアフリカにとって信頼できるパートナーとして位置づける効果を持ち得る。これは、トランプ政権の行動や関税政策に関する不確実性とは対照的である。
全体として、中国は、自国の複雑な制度構造にもかかわらず、比較的首尾一貫した戦略、すなわち自由主義的な国際秩序の代替を追求している。中国は年々自信を深め、軍民両用の、いわゆるデュアルユースと呼ばれるインフラを世界各地で整備し、軍事力投射(パワープロジェクション)に向けた戦略的基盤の構築も視野に入れている。
ロシア
ここ数年、ロシアはアフリカにおける関与を著しく拡大してきた国の一つである。貿易および投資の規模という観点では、依然として限定的なアクターにとどまっているものの、独自の手段の組み合わせを通じて、その存在感と影響力を大きく高めてきた。その手段は多岐にわたる。伝統的な外交や経済協力に加え、不透明な軍事協定、武器供与、傭兵の派遣、さらには特定エリート層への意図的な働きかけなども含まれる。
経済力が不足しているロシアは、比較的少ない資源投入で大きな影響力を確保する戦略を採用している。中国と同様、ロシアも民主主義や法の支配にはあまり関心がなく、むしろ、権威主義体制の支援がその関与の中心的動機の一つとなっている。ロシアは、不安定性や紛争、汚職、法的グレーゾーンを利用しながら活動を展開している。
ロシアの主な動機は、地政学的な目標、すなわち多極的な世界秩序の促進、西側の影響力の排除、戦略的資源の確保である。国際的孤立が強まるなかで、モスクワは新たな同盟相手を積極的に探している。特にロシアは、プロパガンダや偽情報という手段を巧みに活用し、既存の反西洋感情を利用・増幅させることで、自らをより魅力的な代替パートナーとして誇示している。
経済・貿易分野においては、武器輸出(ロシアは依然としてアフリカにとって最大の武器輸出国である[i])に加え、とりわけエネルギーと資源採掘分野[ii]に重点が置かれている。エネルギー分野への投資拡大は、豊富な資源をもつアフリカ諸国との長期的なエネルギーパートナーシップの確保に向けた戦略的方向性を示している。
湾岸諸国
外部勢力としては、サウジアラビアやアラブ首長国連邦といった湾岸諸国の役割も近年ますます拡大している。従来の安全保障や開発政策への関与に加え、ここ数年は戦略的な経済投資も大幅に増加している。両国は、化石燃料依存からの経済多角化の必要性および地政学的影響力をめぐる競争に後押しされる形で、攻勢的かつ大規模な投資戦略を展開している。カタールを含む湾岸諸国は、2022年と2023年の2年間で、アフリカ大陸に対し合計約1,130億米ドルの海外直接投資を実施した。これは、それ以前の10年間全体を上回る水準である[iii]。戦略的に重要で成長性の高い分野、特にエネルギー、インフラ、鉱業に集中して投資している。湾岸諸国は、アフリカ諸国がパートナー関係の多様化を志向している状況を巧みに利用し、他の国際的アクターが残した資本ギャップを埋めている。西側のパートナーに比べ、より柔軟で迅速、かつリスクを厭わない資金供与を行っているという事実がある一方で、その投資の多くは不透明であり、そのことに対する批判や、新たな資源収奪型関係および依存関係の形成に対する懸念も指摘されている。
トルコ
新興の中堅国としての地位を志向するトルコのアフリカにおける関与拡大は、地域的主導権をめぐる競争および「グローバル・プレーヤー」としての地位確立という文脈の中で捉える必要がある。その関与は、貿易量の急速な拡大、外交拠点の増設、そして多数のインフラ事業によって特徴づけられる。トルコとアフリカとの貿易額は2003年の13億5000万米ドルから2023年には124億米ドルへと増加した[iv]。トルコ航空はアフリカ路線網を大幅に拡張している[v]。また、トルコ企業のアフリカ大陸における存在感も顕著に拡大している。その背景には、トルコが45のアフリカ諸国と設置した共同ビジネス・カウンシル[vi]の存在がある。
トルコはしばしば経済関係と軍事協力を結びつけて展開しており、民間警備会社の活用や武器輸出がその一環を成している。比較的低価格の防衛装備品を供給しており、対アフリカ武器輸出においては第4位の輸出国へと成長している[vii]。
トルコは「主要アクターではない」という立場を巧みに活用し、大規模ドナーの影に位置しつつ、自国の核心的利益分野に的を絞った投資を行っている。また、アフリカにおいては「中立的」で歴史的負担の少ないパートナーとして自らをアピールしている。
米国
アフリカ大陸における伝統的に最も影響力のある外部アクターである米国の関与は、現在、変化と不確実性によって特徴づけられている。米国は、従来の援助中心型アプローチから、民間部門を成長および開発の原動力と位置づける投資主導型アプローチへと戦略を移行させつつある。この傾向は以前から見られたものであるが、トランプ政権下で勢いを増し、不確実性も高まっている。USAIDプログラムの大幅な削減は、多くのアフリカ諸国における重要な開発政策の進捗を脅かし、不安定性を高め、他のアクターに関与の余地を与え、米国のソフトパワーの重要な手段を弱体化させている。さらに、予測困難な関税政策がアフリカ諸国に、そして彼らと米国との経済関係に直接的・間接的な影響を及ぼしている。
今後、どのような関与手段がどの程度一貫性をもって活用されるのかは、現時点では見通せない。相互貿易を促進させるための重要な成功要素である「アフリカ成長機会法[viii](AGOA)」も、2025年9月末に失効期限を迎え、その先の見通しも明らかになっていない。トランプ大統領は、アフリカに対しては、取引上の「ディール」が成立する場合にのみ、断片的に関心を持っているようである。その一例が、2025年6月末に米国が仲介したルワンダとコンゴ民主共和国間の和平合意である。トランプは、その見返りとして、コンゴの豊富な鉱物資源へのアクセス権を得られることを誇らしげに発表した[ix]。
もっとも、一貫した戦略の有無にかかわらず、アフリカ大陸が米国にとって戦略的重要性を有していることに変わりはない。もちろん、これは当然ながら軍事的な関与にも言えることで、安全保障上の脅威への対処や安定の促進に加え、中国の軍事力拡張の抑止も明確な目的として掲げられている。
競合するアプローチ:相違点と共通点
主要アクターの関与を概観すると、明確な傾向と優先事項が浮かび上がる。地政学的競争における戦略的な位置付けと影響力の行使は、すべてのアクターにとって中心的な動機である。また、貿易拡大や資源アクセスへの関心も、あらゆるアクターを突き動かす原動力となっている。鉱物資源やレアアースの争奪戦では、競争がますます激化し、既存のガバナンス構造が機能しなくなる危険性が大きい。安全保障分野への関与に関しては、より大きな相違点や、場合によっては相反するアプローチが見られる。
特に顕著なのは、価値志向の相違である。ドイツやその他の西側諸国は、多くの場合、価値観に基づく関与それに伴う条件設定を前面に出すのに対し、アフリカ諸国は、自国の主権的決定への外部からの干渉と受け取られかねない条件を伴わない、迅速な資金アクセスおよびインフラ整備を求めている。このため、(少なくとも表向きには)条件が少ない、あるいは存在しないとされるアプローチは魅力的に映り、中国やトルコのように「内政不干渉」の原則を尊重すると主張するアクターに相対的な優位をもたらしている。
もう一つの重要な側面は、大規模なインフラおよびエネルギー投資である。例えば、中国は交通インフラ、水力発電などのエネルギー分野に大規模投資を行っている。湾岸諸国も、再生可能エネルギー、港湾、鉱業に数十億を投資しており、トルコも空港、道路、発電所の建設に協力している。インフラとエネルギーソリューションの提供は、対象国の経済発展の基盤を構築し、貿易を促進し、長期的な経済的影響力の確保にも資する。アフリカの相手国においては、この種のプロジェクトは高い支持を得ており、関与に対する評価も高まっている。これに対して、ドイツの関与はしばしば断片的で官僚的、かつ目立ちにくいと評価される。目に見える、変革をもたらす大規模プロジェクトに重点を置くならば、包括的かつ統合的な投資アプローチが必要であろう。
競争的思考はすべてのアクターに共通していると考えられるが、とりわけロシアと中国はその点で強い姿勢を示している。両国にとって重要なのは、自国の魅力や競争力の向上だけでなく、西側アクターの意図的な弱体化および信用毀損が戦略的要素となっている。ただし両者の間には差異も存在する。中国は投資保護の観点も含め安定を重視する傾向があるのに対し、経済的な力に劣るロシアは、影響力拡大の手段として意図的に不安定性を利用する場合がある。
アフリカ諸国にとって、多様なアクターによる関与拡大は、パートナーの選択肢を広げ、異なる提案の中から選択する機会をもたらしている。この点に関しては、競争は活力を生むとの見方も可能である。しかし、競争の激化がアフリカ諸国にとってそのまま自動的に自己決定権の強化や条件の改善につながるとは限らない。新たな依存関係の形成や、資源収奪的取引の拡大といったリスクが存在するためである。後者は、場合によっては統治エリートにとって利益をもたらし得るが、当該国の持続可能な発展に資するとは限らない。疑問視される事例としては、西アフリカの軍事政権の安定化支援の対価としてロシアが金鉱を開発・利用しているケースや、費用対効果が限定的な高額インフラ事業などが挙げられる。
ドイツにとっての核心的な課題:関与の強化
他のアクターの関与を観察して導かれる最も重要な結論は、単純であると同時に最大の課題でもある。すなわち、ドイツはサブサハラアフリカへの関与を軽視することは許されないということである。他のアクターによる関与の拡大と、場合によってはより成功している取り組みにより、ドイツと欧州は、アフリカで極度のプレッシャーにさらされていると同時に、同大陸における強固なパートナーシップおよび戦略的影響力に依存している。他のアクターが戦略的重要性を認識しているのに対し、ドイツ、そして部分的に欧州の関与は、依然として主に人道的視点から捉えられている。このような開発協力(EZ)における基本的な姿勢は、アフリカ社会の主体性(agency)にも、ドイツの戦略的利益にも合致していない。散発的な取り組みやプロジェクトは、ほとんどの場合影響力もなく、しばしばその重要性も認識されておらず、またアフリカを「援助の受け手」として軽視する見方が、アフリカ大陸におけるドイツの活動の特徴である。官僚的構造の障壁も高く、柔軟性に欠ける資金調達手段、承認手続きは、多くのアフリカ諸国において理解を得られにくく、効果的なドイツの関与を困難にしている。総じて言えば、ドイツにはアフリカとの協力に関する時代に即した基本理念が欠けている。
米国の関与の急激な転換は、インスピレーションというよりもむしろ教訓とすべき事例である。開発資金の大幅削減は短期的に深刻な影響を及ぼし、長期的にも重要な開発努力を著しく阻害する可能性がある。仮に他の西側パートナーも同様の形で責任から後退するならば、それはアフリカ大陸にとって深刻な打撃となるだけでなく、相手国自身が影響力行使の重要な手段を失うことにもつながる。
各国アプローチの比較から得られる重要な教訓は、経済、安全保障、開発政策の次元を横断した統合的アプローチが、効果と影響力にとって決定的に重要だということだ。中国は、高度に調整された、長期的かつ政策分野を横断した戦略的ビジョンを示している。湾岸諸国は、外交的イニシアチブ、資金調達モデル、民間セクターの動員を、統一的なアプローチでうまく結びつけている。トルコは、経済・安全保障政策への関与を、ソフトパワーの戦略的要素で補完している。このような統合的アプローチは、ドイツの関与にとっても有益であろう。しかし、そのためには省庁横断的な戦略的取り組みが必要となる。
経済的な課題、逼迫した財政状況、増大する社会支出、安全保障上の脅威、拡大する防衛予算といった状況下において、開発協力への支出を正当化することは容易ではない。それでもなお、ドイツはアフリカへの関与を維持し、その質を高めていくべきである。その際には、効率性向上に向けた構造および手法の見直しとともに、当該支出がドイツの国益に資する投資でもあるという明確な理解が求められる。
ドイツの視点からの教訓:5つの重要な課題
アフリカにおけるドイツの開発政策上の関与の方向性に関する提言は、すでに数多く提示されている。各種団体や政党による意見書、研究調査報告、省庁による戦略文書においても、主にドイツの開発協力における重要な調整点が議論されてきた。しかし、これまでのところ、これらの提言が実際の政策形成に十分に反映されてきたとは言い難い。他のドナーとの競争という文脈で、また、ならびに他国の関与に見られる抑止的あるいは示唆的な事例を踏まえ、ここでは、特に調整の必要性が高いと考えられる五つの重点分野を取り上げる。
1. 透明性のある利益志向政策
ドイツのサブサハラアフリカでの関与は、いかなる利益に寄与するのか?皮肉的な見方をすれば、「自国の利益にも、相手国の利益にもなっていない」との批判もあり得る。もちろん、それは事実ではない。しかし、そのような批判を許す余地が存在していることも否定できない。一方で、ドイツは伝統的に自国の利益を明確に表明することには慎重であり、開発協力(EZ)という「援助ロジック」の背後で自国利益の明示を避けてきた。他方で、現在では他のアクターの方が、アフリカ諸国の具体的利益により的確に応えているように見受けられる。
これからのドイツは、自らの関与をより明確にアフリカ側の利益に沿って設計しつつ、自国の利益も率直かつ自信をもって提示すべきである。具体的には、インフラ投資への強い需要にこれまで以上に応え、この分野を他国に委ね過ぎない姿勢が求められる。長期的な持続可能性戦略を堅持しながら、迅速かつ目に見える成果を生む「即効性と戦略的なインパクトが高いプロジェクト」を並行して推進することは、決して矛盾ではない。理想的には、両者の利益が明確に重なり合う分野に協力を集中すべきである。とりわけドイツ民間部門の積極的関与を促進することで、真のウィンウィン関係を構築することが可能となる。
アフリカ側の利益をより重視するということは、すでに中国や湾岸諸国が実践しているように、アフリカ連合が掲げる「アジェンダ2063[x]」のような国家・地域開発計画との整合性を強めることも意味する。さらに、アフリカの地域機関との緊密な連携、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)への支援、アフリカ主導の安全保障イニシアティブの強化も同様に重要である。
自国の利益について透明性をもって言及し、ドイツの関与の方法について率直に議論することは、他のアクターと差別化を図る上でも有利になる。たとえば、中国は「政治的条件を付さない支援」を主張してきたが、特に過去数年に亘ってこれとは反対の経験をしてきたことから、近年アフリカでもその実態に疑問が呈されている。不透明な投資契約は、新たな依存や搾取への懸念を高めている。ここにこそ、ドイツが信頼できる代替パートナーとして存在感を示す余地がある。
2. 自国経済の動員
他の主要アクターを見れば、ほぼすべてが自国の民間セクターを対アフリカ関与に効果的に組み込んでいる。中国、湾岸諸国、トルコにとっては、これは長年の戦略の一部であり、最近では米国もこの方向へと大きく舵を切っている。ドイツとは対照的に、これらの国々はアフリカでの開発協力を自国経済の拡張に結びつけることに成功している。中国の場合、開発プロジェクトの実施をほぼ独占的に自国企業に委託している。しかし、西側諸国も、政府開発援助(ODA)の大部分を「アンタイド援助」、つまり自国企業への発注を明示的に義務づけない援助として分類しているにもかかわらず、実際には自国企業の関与をより強力に推進している。他の国々が自国企業の経済拡大の機会を積極的に創出している一方で、ドイツはあまりにも消極的な姿勢をとっており、さらに悪いことに、ドイツの開発協力資金の相当部分が地政学的競合国に流れている。
中国や湾岸諸国の企業は、厳格な基準や規制が十分に適用されない状況から利益を得ている。中国は「内政不干渉」を強調するが、実際には環境基準や労働基準の回避が、搾取や環境破壊を招いている。当面の例としては、ジンバブエで、中国企業が、ジンバブエの基準を下回るビニール袋を生産・輸入したりして、環境破壊を招いている[xi]。また、鉱業分野では、ジンバブエの環境および労働権を意図的に回避している中国企業の活動も同様である[xii]。ドイツは当然ながら異なるアプローチを取らなければならない。基本的に、重要な基準や要件を維持しつつ、企業参入の障壁を低減することを目標にすべきである。とりわけサプライチェーン規制などの制度設計において、ドイツ企業に過度な競争劣位をもたらさない慎重なバランスが必要である。
また、トランプ政権下での予測困難な政策運営や援助削減への懸念はあるものの、米国の新アフリカ戦略から学ぶべき点は多い。その主なポイントは、より多くの米国企業とアフリカとの戦略的連携、積極的な経済外交(各大使は米国企業のために積極的に活動し、商取引の促進に努めるよう指示されている)、米国企業が関与するインフラプロジェクトへの注力、市場関連改革(market-relevant reforms)の推進、資金調達手段の適合化などである[xiii]。
資金調達手段に関しては、湾岸諸国の精緻な金融アーキテクチャやリスク分散戦略、そして大規模投資のための官民パートナーシップ(PPP)重視などといった、民間資本動員の手法なども参考になる[xiv]。ドイツも、輸出信用保証や投資保証制度の改革を実施し、リスクが高いと認識されているアフリカの市場に合わせた革新的な資金調達手段を導入すべきである。これは、ドイツ企業が他のアクターとの競争に打ち勝つために極めて重要である。同時に、ドイツ特有の官僚主義的障害の克服が不可欠であり、開発協力(EZ)と対外経済振興をうまく統合させるためには、迅速な実行力と実用的なアプローチが重要な鍵となる。
3. 持続可能な投資
ドイツは、公正でパートナーシップに基づく経済関係に重点を置き、持続可能な開発という観点から、現地での工業化、付加価値の創出、雇用創出という 3 つの要素を、開発協力(EZ)の最優先事項として明確に位置付けるべきである。
資源(原材料)のパートナーシップ、特にエネルギー転換に関しては、ドイツと欧州は激しい競争にさらされている。西側のアクターは、依然としてアフリカの資源開発において重要な役割を果たしているが、中国はその差を急速に縮めようとしている。特にレアアースをはじめとする重要資源は争奪の対象となっており、これらの分野における中国の既に強大な市場支配力は、戦略的投資や二国間協定を通じてさらに拡大している。湾岸諸国やトルコも躍進している。しかしドイツは、単なる資源採掘に依拠し抽出型経済モデルを固定化させる他のアクターとは異なり、質的な差別化を図る余地を有している。アフリカ諸国が正当に求めているのは、現地での付加価値創出、産業化、技術移転を促進する投資である。強固な産業基盤と高度な技術力を有するドイツは、単なる資源取引を超えた協力関係を構築する十分な条件を備えている。
ドイツの関与は、相互に高い利益をもたらし、アフリカ側の優先課題と合致する重点分野への投資に的を絞って集中的に行えば、特に魅力的かつ競争力があると言える。これには、重要鉱物に加え、再生可能エネルギーも含まれる。これらの分野で、現地における加工・精製能力の育成に注力することで、ドイツの戦略的関心と相手国の開発目標を結びつける、収益性の高いパートナーシップを構築することができる。
また、近代的な農業、製造業、職業訓練の分野でも、ドイツは専門的知見を提供し、その高い評価を活かすことができる。ドイツの質の高い仕事、中小企業(ミッテルシュタント)の強み、デュアル職業訓練制度は、アフリカのパートナーに広く認知され、概して肯定的に受け止められている。したがってドイツは、品質、長期性、信頼性、人と環境への責任といった要素を、自信をもって前面に打ち出すべきである。 安価だが持続可能性に乏しい選択肢と比較した場合の「高品質で持続可能な解決策」を、明確な競争優位として打ち出さなければならない。
持続可能性を評価する際には、債務負担能力についても考慮しなければならない。一帯一路構想の初期に中国が行った、一部では巨額かつ不透明な投資は、アフリカ諸国の一部に深刻な国家債務をもたらした。近年では中国も、相手国の国家予算に過度の負担をかけないよう慎重になってはいるものの、多くのプロジェクトは依然として、関係国の財政にとって大きな負担となっている。確かに実質的な経済機会を生み出すプロジェクトも存在するが、不利な契約条件、不十分な実現可能性調査、さらには相手国内での広範な汚職は、生み出せるはずの利益を大きく損なっている。湾岸諸国による巨額の投資も、同様の懸念を伴っている。この点において、ドイツは、開発援助資金だけでは不十分であるという現実を踏まえて、透明で持続可能な資金調達慣行を堅持・推進するとともに、革新的な資金調達モデルを発展させることで、他国とは一線を画すことができる。
4. 価値観の重視と民主主義の促進
アフリカにおける外部アクター間の競争は、経済的な側面に加えて、価値観や社会モデルをめぐる競争でもある。中国やロシアなどの権威主義的なアクターは、自国で実践してきた独裁的な統治手法の「輸出」を強化し、政治勢力や意思決定者に対して戦略的に影響力を行使し、偽情報の拡散や情報操作を通じて民主的なプロセスを弱体化させている[xv]。
この課題に対しては、自らの提案の魅力に依拠するという間接的対応だけでなく、具体的かつ主体的な措置によって直接的に対処する必要がある。政治的コンディショナリティ(条件付与)は重要な手段であるが、同時に諸刃の剣でもある。一方では透明性の向上や民主主義の最低基準の遵守を促進するが、他方ではドイツの関与を複雑化・長期化させ、アフリカ側にとって魅力のないものにしてしまう可能性があり、ここにジレンマが存在する。そのため、案件ごとに慎重な判断を行う必要があるが、それは一貫性の欠如や信頼性の低下というリスクも内包する。しかし、画一的な「ワンサイズフィッツオール(one-size-fits-all)」のアプローチは適切ではない。
この点に関しては、ソフトパワーの手段にも特段の注意を払う必要がある。具体的には、文化交流、言語・教育支援が挙げられるが、とりわけ重要なのは、民主主義志向の政治勢力、自由で独立したメディア、活発な市民社会、そして複数政党制に基づく政治環境を支援するための積極的措置を講じることである。
5. 自国の関与に関するコミュニケーション戦略
サブサハラアフリカの複数の国々で、各国の関与に関する印象を尋ねてみると、ドイツに関する回答は概して曖昧であることが多い。これは、主にドイツ自身の対外発信力が弱いことが原因である。他のアクターとは異なり、サブサハラアフリカにおけるドイツの関与について、一貫したナラティブ(言説)が確立されていないのである。
これに対し、中国は、大規模なメディア戦略を通じて積極的にイメージ形成を行い、多くの場合ポジティブな認識の醸成に成功している。中国は、自らも欧州の植民地支配の被害国であったという歴史的事実を巧みに利用している。すなわち、自国も「開発途上国」であり、「グローバル・サウス」の一員であるがゆえに、多極的な世界秩序を支持し、植民地支配に反対していることを強調する[xvi]。この言説は、リベラルな国際秩序および欧州の植民地支配の歴史に対する明確な差別化戦略と理解できる。しかし、こうした「歴史的パートナーシップ」の主張は、現実とはかけ離れたものである。たとえば、新型コロナウイルス感染症流行初期における中国国内でのアフリカ人学生に対する差別的対応や、アフリカ沿岸海域における中国漁船団の活動は、大陸内で否定的に受け止められている。
また、ロシアによる偽情報キャンペーンもまた、欧州とアフリカの歴史的関係の負の側面を強調する点で共通しているが、その論調はより敵対的である。今日のロシアは、アフリカの人々の多くが、その帝国主義的な性質や植民地的過去について十分認識していない状況を利用している。また、冷戦期においてアフリカの社会主義的解放運動を支援したという歴史は、ロシアのイメージ向上に一定程度寄与している。他方で、ワグネル・グループによる残虐行為や、ロシアの修正主義的な政策は、広く公で議論されることはほとんどない。
これに対し、西側諸国は、その関与により、植民地支配の歴史的継続性を常に疑われている。加えて、サブサハラアフリカでは、西側アクターの姿勢がしばしば父権主義的と受け止められている。こうした状況は、中国やロシアが自らを西側とは対照的な存在として位置づけることで好意的イメージを構築し、西側の信用をさらに損なうことを容易にしている。この力学は、民主主義や人権を掲げるドイツおよび欧州の価値観に基づく関与の信頼性を損なわせ、その実効性を大きく制約している。
したがってドイツは、真に対等でパートナーシップに基づく関係性を一貫して強調することにより、この状況の是正を図る必要がある。目標は、競合するアクターに不要な攻撃材料を与えないよう配慮するとともに、彼らの問題ある実践については明確に距離を置き、積極的に差別化を図るべきである。また、開発協力の文脈において反西側的ナラティブを自ら助長しないこと、父権主義的と受け止められ得るあらゆるニュアンスを排除することも重要である。そのうえで、包括的なイメージ戦略として、ドイツのサブサハラアフリカにおける関与全体を、実用的かつ価値観に基づく協力であると強調し、発信していく必要がある。
結論
他のアクターとの競争において後れを取らないためには、従来のアプローチを再検討し、自国の提案の効率性と魅力を高める必要がある。これに失敗した場合の代償は大きい。想定される影響としては、影響力の喪失や国際的同盟関係の弱体化、権威主義的な国家・社会モデルの拡大、自国経済にとって重要な市場や投資先の喪失、サプライチェーンの多様化の停滞と重要鉱物の供給逼迫、紛争予防・過激主義対策・平和維持における関与能力の低下、さらには環境、ジェンダー平等、社会的包摂といった分野での後退が挙げられる。
サブサハラアフリカにおける今後の積極的な関与を強化し、それを国内で正当化し得ると同時に相手国にとっても魅力的なものとするためには、明確な政治的意思と改革への意欲が不可欠である。そして何よりもまず、他の多くの危機や課題が前面に出ている状況下にあっても、この地域への関心を抱き続けることが重要である。開発協力、対外経済振興、安全保障政策は、それぞれ個別にではなく、相互に連関したものとして再構築されなければならない。
もっとも、このような包括的な構想は、政治実務の現場においても、また世論の受け止め方においても、過度な期待や過重負担を生み出しかねない。これを回避するためには、外交上の立ち位置を戦略的に明確化することが求められる。その際、ドイツは、自らが比較優位を有する分野に焦点を当て、その強みを選択的かつ効果的に発揮すべきである。同時に、従来の援助ロジックに過度に依拠した外交実践から意識的に脱却し、国際的責任をより包括的に捉える視点へと転換する必要がある。そのためには、これまでしばしば縦割り的に活動してきた省庁間の連携を強化し、より一貫性のある政策運営を実現することが不可欠である。また、断片的な関与を克服し、共同行動能力を高める観点からも、欧州各国間のより緊密な連携が急務である。その際には、深刻な緊急事態の緩和や雇用創出など、現地の生活条件の改善に具体的に貢献する関与を特に優先すべきである。対外関与は、自国の経済的利益と整合し、地政学的競争の中で戦略的パートナーシップを強化し、相手国における民主化推進勢力を支援し、そして何よりも平和と安定に実質的な貢献を果たすとき、その効果を高めることができる。
本稿は、コンラート・アデナウアー・シュティフトゥング(KAS)により2025年9月26日に発行された『Auslandsinformationen(海外情報)』2025年第3版『Entwicklungszusammenarbeit – Globale Trends und Lehren für Deutschland(開発協力 ― 世界的動向とドイツへの教訓)』の中で書かれたドイツ語の記事『Externe Akteure in Subsahara-Afrika – Herausforderungen und Lehren für Deutschland(サブサハラアフリカにおける外部勢力の動向-ドイツへの課題と教訓)』を日本語に翻訳したものである。
[i] George, Mathew 他 2025年:Trends in International Arms Transfers(国際的な武器移転の趨勢「仮訳」)2024年、SIPRI Fact Sheet, Stockholm International Peace Research Insitute(ストックホルム国際平和研究所SIPRIファクトシート)、2025年3月発表:https://ogy.de/3bw2 [2025年7月15日閲覧]
[ii] この文脈における「資源採掘・抽出(Extraktive)」または「資源採掘・抽出関係(Extraktive Beziehungen)」とは、ある国や地域から資源や原材料が一方的に採取・搬出される一方で、当該地域における持続可能な発展、現地での付加価値創出、あるいは社会的利益の創出が伴わない、非対称的な経済構造を指す。
[iii] Procopio, Maddalena / Čok, Corrado 2025年: Diversification nations: The Gulf way to engage with Africa(多角化国家――湾岸諸国によるアフリカ関与のアプローチ「仮訳」)、Policy Brief, European Council on Foreign Relations(欧州外交問題評議会政策ブリーフ)、2025年3月24日発行:https://ogy.de/vix6 [2025年6月30日閲覧]
[iv] Parens, Raphael / Plichta, Marcel 2025年: Turkey’s Return to Africa(トルコのアフリカへの回帰「仮訳」)Foreign Policy Research Institute(フォーリン・ポリシー・リサーチ・インスティテュート)2025年3月10日発行: https://ogy.de/z4oh [2025年6月30日閲覧]
[v] Turkish Airlines(トルコ航空)、Investor Relations: Flight Network(投資家向け情報:フライトネットワーク「仮訳」)、https://ogy.de/z2f9 [2025年8月6日閲覧]
[vi] Ministry of Foreign Affairs, Republic of Türkiye(トルコ共和国外務省): Türkiye-Africa Relations(トルコとアフリカの関係「仮訳」):https://ogy.de/ic8g [2025年7月23日閲覧].
[vii] Parens / Plichta 2025年, N.5.
[viii] アフリカ成長機会法(AGOA)は、サブサハラアフリカの一部の選定された国々に対し米国市場への関税免除によるアクセスを付与する米国の通商法であり、経済成長および地域統合の促進を目的としている。
[ix] Mureithi, Carlos 2025年: Trump eyes mineral wealth as Rwanda and DRC sign controversial peace deal in US(トランプ氏、鉱物資源に照準-ルワンダとコンゴ民主共和国が米国で物議を醸す和平合意に署名「仮訳」)The Guardian(ガーディアン紙)、2025年6月27日発行:https://ogy.de/qi2c [2025年6月30日閲覧]
[x] アジェンダ2063は、アフリカ連合の長期開発フレームワークであり、2063年までにアフリカを豊かで、統合され、平和で、自立した大陸へと発展させることを目標としている。
[xi] Mujuru, Linda 2025年: Zimbabwe Fights a Losing Battle Against Illegal Chinese Plastics(ジンバブエ、違法な中国製プラスチック問題への対応に苦慮「仮訳」)Global Press Journal(グローバルプレスジャーナル)2025年3月2日発行: https://ogy.de/w4eq [2025年7月23日閲覧]
[xii] Africa Defense Forum(アフリカ防衛フォーラム)2025年:Troubles Mount With Chinese Mining In Zimbabwe(ジンバブエにおける中国の鉱業をめぐる問題「仮訳」)2025年4月22日発表:https://ogy.de/xlgd [2025年6月30日閲覧]
[xiii] Mersie, Ayenat 2025年: Inside the United States’ new ‚trade, not aid‘ strategy in Africa(アフリカにおける米国の新「貿易重視・援助縮小」戦略の実像「仮訳」)devex(デベックス)2025年5月23日発行: https://ogy.de/4pa9 [2025年6月30日閲覧]
[xiv] Kolek, Brian 2025年: Scaling Renewable Energy Investments: The UAE’s Strategic Blueprint for Africa(再生可能エネルギー投資のスケールアップ:アフリカにおけるUAEの戦略構想「仮訳」), Renewables in Africa(リニューアブル・イン・アフリカ)、2025年5月20日発信:https://ogy.de/wwnj [2025年6月30日閲覧]
[xv] Kamp, Mathias 2021年: Das Engagement autoritärer Geberstaaten in Afrika(アフリカにおける権威主義的な援助国の関与「仮訳」)、Auslandsinformationen 2/2021(海外情報、2021年第2版)、コンラート‧アデナウアー‧シュティフトゥング、2021年7月5日発行、https://ogy.de/wwuq [2025年6月30日閲覧]
[xvi] Wang, Yi 2021年: Working Together to Write a New Chapter of Developing Countries Seeking Strength Through Unity(団結によって力を求める途上国の新たな章を共に刻む「仮訳」)、中華人民共和国在ケニア共和国大使館、2021年10月12日発表:https://ogy.de/3e70 [2025年6月30日閲覧]